• テキストサイズ

逢ふことの(裏)~声優さんと一緒~

第74章 逡巡


「信彦さん?」

驚いた表情を見せる日菜乃ちゃん。

「え?」

「今…」

「え?どうかした?」

「えっと…さっき…よく聞こえなくて…」

「あー。ここにはもう無いけど、都内なら何店舗かあるから。」

「そんなに気に入ってくれてたんだね。」

「知らなかったよ。」

「今度の休みに一緒に行こうか?」

「日にちの確約は出来ないけど。」

「あ…はい。大丈夫です。欲しいリングがあるんです。」

「リング?」

「あ!変な意味じゃなくて、ミルククラウンのデザインのリングがあるじゃないですか?」

「あれが欲しいなって、思ってて。」

人差し指で王冠を描くように宙をなぞる。

「あー。あれね。ボクも欲しいと思ってたんだ!お揃いにしようか。」

笑顔を向ければ、安心したように笑ってくれた。

……ようやく言えたのに……。

ここまで来るのにどれだけ時間がかかったと思ってるの?

とぼける言葉は考えなくてもすぐに出るんだから…

頭にこだまする声に首を横に振る。

そう。

はぐらかすのも得意になったみたい。

結局、何も変わらない。

ぶつかる視線から逃れるように視線をそらす。

お揃いのリングだって。

贈っても受け取ってくれるかも分からないのにね。
/ 549ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp