第74章 逡巡
「あれ?」
行き着いた先にあるはずのお店が無い。
絶対ここの場所であってるはずなのに。
キョロキョロと周りを見渡しても目的のお店は見つからない。
「信彦さん…ここにお店ありましたよね?」
「階を間違えてるんでしょうか?」
少し後ろを歩いていた信彦さんに問えば、少し寂しそうに私を見つめる。
「あのお店は期間限定の出店だったんだよ。」
「ここには、もう無い。」
近づき私の耳に髪を掛ける。
「変わらないものなんて、そうそうあるものじゃないんだよね。」
「気付かないうちに変わってるんだ。」
「ずっと同じなんて…奇跡みたいなものだから。」
「気持ちだってそうでしょう?」
「ね?日菜乃ちゃん。」