第73章 夢幻
強い日差しに目を細める。
~♪
鼻歌交じりなのは、すごく機嫌が良いから。
鼻先をかすめる風は、心地良い熱をはらむ。
「もう直ぐ季節が変わるのかな?」
大きく息を吸って、ゆっくり吐いた。
こうしてゆっくりするのは久しぶり。
ベランダから遠くを見つめると東京のシンボルが小さく見える。
「今日はどこに行こうか?」
「甘い物を食べに行こうか。」
「それとも遠出して海とか?」
そう言えばボク達は、一緒にどこかに行った事が多くない。
ハワイは別として、いつも近場ばかり。
もっと一緒に色んな所に行ければ良いのに。
これからは、もう少し…
気持ちだけでも一緒にいられたら良いんだけど…。
被ったキャップを被り直して、ベランダの手すりに背中を付ける。
それにしても、まだ帰って来ない日菜乃ちゃん。
シャワーだけのはずなのに遅いなぁ。
一緒にいられる時間も貴重なのに。
そうだ。
良いこと思いついた。
キミもそう思ってくれると良いんだけどね。