第73章 夢幻
「ね?ボクのシャツ知らない?」
「向こうの部屋の引き出しの中にありますよ。」
「じゃあ、靴下は?」
「靴下は、こっちです。」
一緒に住んでるんだから、こんな会話普通なんだろうけど。
何だか嬉しいんだ。
「お天気良いですし。」
「帽子もいりますかね?」
「んー…帽子はどこだったかな?」
「あ。日菜乃ちゃん。この前作ったグッズでキャップがあるんだ。」
「え?グッズですか…?」
一瞬動きが止まりボクを見上げる日菜乃ちゃん。
若干顔が引きつったのは気のせいではないはず。
「そんな顔しないでよ…すごくお洒落で使いやすいよ?」
「そうなんですか?」
「ちょっと待っててね。」
自然と鼻歌が交じる。
ずいぶんご機嫌みたい。
あんなに不安だったのに…
単純過ぎて笑えてくるなぁ。