第73章 夢幻
聞こえる寝息。
そっと瞼を開ける。
腕の中に収まる日菜乃ちゃん。
久々に感じる温もりに夢か現実か分からない…
手を上げれば長い髪が指の間をすり抜ける。
その感覚に現実なんだと実感。
今、何時だろう?
ベッドサイドに置いたスマホの画面に表示される時間。
06:20
まだ起きるには早いけど。
眠りに落ちるのも勿体ない。
日菜乃ちゃんは、まだ夢の中かな?
顔を覗き込みたいけど、せっかく腕の中に閉じ込めてるのに。
解き放ちたくない気持ちもある。
視線を掌から天井へ。
最近、体を動かしてもいないし。
せっかく朝早く起きたことだし。
汗でも流しに行こうかな。
シャツはどこにあったかな?
クローゼットの中か。
あの部屋の引き出しの中か。
そんなことを考えていれば、腕の中でモゾモゾと動き始める女の子。
「おはよう。」
この言葉を言うのはどれくらいぶりなんだろう。