第73章 夢幻
あれから、どれくらい経ったんだろう。
眠くなるどころかどんどんさえる目と頭。
規則的に聞こえる寝息。
私の背中は汗でぐっしょり。
遮光カーテンの隙間から洩れる光が強くなる。
今日は天気が良いのかな…?
ぐるんっと向きを変えて体をベッドの端へ移動する。
隙間から覗く窓の向こうの景色を見ようと目を細めた。
「んー…」
聞こえる声に思わず身構える。
さっきまで私がいた場所を掌で触って探しているよう。
そっと手を伸ばせば掴まれ引き寄せられた。
あまりの強さに驚いてる隙に、信彦さんの腕の中に収まる。
信彦さんが起きてなければ、考えなくて済む。
今は、何も考えないで。
あの頃に戻ったみたいに…
かみ締めることぐらい出来るかな?
………今日はオフだし。
もう少しだけ。
夢を見させて。