第72章 仮寓
リビングにも入らず、直行で浴室へ。
強めのシャワーを頭からかける。
下を向けば床を流れる水。
何も考えたくない。
それでも頭をよぎる沢山の疑惑。
払拭したいのに。
何も出来ない。
逃げてばかりで。
目を背けて気付いてないふり。
手放す気なんて微塵も無いんだ。
手放すくらいなら壊したい。
いや。きっと壊してしまう。
歯止めなんて効かないから。
だから。
目を背けてる?
そんなの言い訳。
向き合う勇気が無いだけなんだ。
そんなこと前から気付いてた。
床にしゃがみ込み、瞼を閉じる。
聞こえるのは体に当たるシャワーの音。
排水溝に流れる音。
この気持ちも全て流れてしまえばいいのに。