第8章 享楽*
今日の収録。
どんな風に過ごしたのか全く記憶が無い。
こうして、ブースを出て歩いているんだから…
何とか形にはなったんだと思う…
一歩一歩、重い足を前へ進める。
今、私はどんな顔をしてるんだろう。
きっとヒドい顔。
心の奥に残っていた真っ黒なものが、どんどん私を支配する。
頭の中まで真っ暗。
何で。
何で。
またあの人なの?
そんなに魅力的なの?
私なんて、見向きもして貰えないの?
好きだと思われてたなんて、ただのカンチガイ?
唇を噛み締めて、廊下を進む。
こんな現実…耐えられない。
涙が溢れそうになる。
前からは、こちらに向かって歩いてくる人。
こんな顔見せられない。
調度目に入った『空き』が表示された部屋の扉を開けて逃げ込んだ。