第69章 同朋
どれだけ泣いたんだろう。
何も言わずに近くにいてくれるユキ。
深呼吸をすれば、切れ切れになるものの息は吸える。
今度は、ゆっくり息を吐く。
すると、差し出された淡いピンクが可愛いカクテル。
多分、このカクテルにもメッセージが込められてるんだと思う。
「ありがとう。ひと泣きしたらすっきりしちゃった。」
「そう。なら良かった。」
ぐいぐい聞いてこないユキ。
職業柄なのかな。
本当にありがたい。
「このカクテルは?」
「September morn」
「可愛い色だね。いただきます。」
「日菜乃には、物足りないかも。」
ほどよい酸味が口に広がった。
「うぅん。美味しいよ。ありがとう。」
「あんまり無理しないようにね。」
「うん。……顔がパリパリになっちゃったよ。」
涙で乾燥した頬をさする。
「だいぶ泣いてたからね。」
「こんな顔じゃ営業妨害になるね。」
両手で頬を包み、視線を落とした。
「うん…確かに。」
「ちょっと!そこはフォローすべきでしょ?」
「少しでも元気出たなら良かった。」
あんなに泣いても、こうして笑える。
「……もっと早くここに来れば良かった。」
「今度来たら、このカクテルの意味教えてね。」
会計を済ませイスから滑り降りた。
「またのご来店をお待ちしております。」
そっと微笑んで見送ってくれるユキ。
もっと視野を広げれば、見えなかったものも見えてくる。
下ばかり見ても仕方ないじゃない。
少しだけ。
少しだけ上を向いてみようかな。