第67章 昂進
スタジオを出て、少し歩いた先にあるカフェ。
夕方のこの時間は思いのほか人も少ない。
テーブルに置いたスマホの画面を眺めては画面が消えるとタップして表示するを繰り返す。
この画面をどれくらい眺めているんだろう。
横に置かれたコーヒーは、既に冷え切ってしまっている。
不甲斐なさに気落ちが隠せない。
「はぁ…考えても何も変わらないし。」
「もう帰ろう。」
ひと言呟き席を立つ。
「信彦さん…お仕事かな…」
会計を済ませ外に出れば、既に日が沈んだ空。
この広い世界にひとり。
そんな気がするの。
考えると心細くなる。
店内とは違って人通りが多い。
その中を間を縫うようにして足早に先を目指した。