第68章 愛憐
『今日はお帰り遅いですか?』
『ごめん!ラジオがあるから遅いんだ。』
『大丈夫ですよ。忙しいのに連絡しちゃってすみません。』
『謝らないで。終わったら、すぐ帰るから!』
『でも遅くなるから先に寝ててね。』
『はい!ありがとうございます。お仕事頑張って下さい。』
ラインの画面を閉じて、机に突っ伏す。
その反動でスマホがフローリングに落ちたけど拾う気にもなれない。
「また一人になっちゃった…」
テレビをつければ聞こえる声が気になってリラックス出来ない。
何の音も聞きたくないけど、しんと静まり返ったあの独特の音も聞きたくない。
疲れてるから眠りたいけど、わざわざベッドに移動する気力も無い。
「何もしたくない…」
ただ…誰かに…
………
信彦さんに傍にいて欲しい。
体温を感じていたい。
自分の不甲斐なさに心細くて。
仕事だから仕方ないのに。
心のどこかに感じるモヤモヤ。
自分でどうにかしないと。