第64章 体貌
タクシーに乗り込み行き先を告げる。
空は、まだ暗い。
これなら明ける前に帰れそう。
信彦さん。まだ帰ってないといいけど。
私は本当に卑怯で最低。
こんな私を心から愛してくれる人なんていないもの。
想いに縋ってる。
ただ甘えてるだけ。
このままだと誰も信じてくれない。
それくらい分かってるけど……
「運転手さん。少し窓開けて良いですか?」
「どうぞ。」
少し開けて貰った窓から入り込む空気。
火照ったカラダの熱を下げる。
瞼を閉じれば襲う睡魔。
少しだけ眠ろう。
ここから先は、信彦さんの事だけを。