第63章 披瀝*
私の前にいる人は…だぁれ?
頬を伝う雫。
指先で触れようと差し出せば顔を背けられる。
立ち膝になって前屈みで顔をのぞき込む。
「泣いてるんですか?」
「泣いてねーよ。これくらいで誰が泣くか。」
首に手を掛け首元に抱きつく。
「そうですね。泣いてない。」
「何も見えません。」
短い髪を撫でて、そっと頬に口づける。
唇で感じる濡れた肌。
舌先で舐めればしょっぱい。
あの人の元から離れるなんて選択肢は無いけど。
アナタを突き放す選択肢も無い。
今まで私を助けてくれたアナタ。
今度は私がお返しします。
こんな私で少しでも役に立つなら。