第63章 披瀝*
虚ろな視線がぶつかる。
手を伸ばせば、触れる肌。
絡める指。
その指にそっと口づけた。
「ヒナ…」
「俺はお前が好きだよ。」
「前にも言ったけど。」
「思いは募るばかり。」
「何度も何度も諦めようって思ったんだよ。」
「でも…やっぱり無理だった。」
「俺はノブからお前を奪いたいんだ。」
「でも……実際は…」
汗で頬についた髪を耳に掛ける。
「手を出しておいて今更だけど…」
「カラダの関係なんて要らないんだ。」
「一緒に出掛けられなくても構わない。」
「お前とノブの時間をほんの少しでいいんだ。」
「俺に分けて。」
「…この部屋で…2人だけでいられる時間を」
「少しだけでいいんだ。」
「それだけで十分。」
「心もカラダも…要らないから。」
「ほんの少しの時間を俺に……。」