第62章 衷心
イスに座りながら、達央さんが伺うように声を掛ける。
「ノブ何だって?」
「良平さん達とご一緒みたいで。」
「多分、朝になるから先に休んでてだそうです。」
「そっか。………送るよ。」
そう言って、立ち上がると手をさしのべてくれる。
少し戸惑うもののその手に自分の手を重ねた。
『送るよ』の言葉に気落ちする自分に笑えてくる。
信彦さんが帰ってこない事さえ言う必要無かったのに。
さっきの口づけで点いた灯を消そうともしない。
カラダは求める。
もっと触れて欲しい。
心は?
瞼を閉じて、自分に問う。
答えなんて、ずっと前から変わらないのにね。