第62章 衷心
そんな顔?
どんな顔してるんだろうな?
少なくとも頼りになる表情では無いんだろう。
「………ヒナ…」
「俺ってどんな風に見える?」
「え?」
「情けないだろう?」
「そんなこと…っ」
「あるだろう。」
「俺はさ。人に頼られるような人間ではないよ。」
「何言ってるんですか…慕ってる後輩沢山いるじゃ無いですか。」
「………」
「そんな発言、達央さんらしくない。」
「………なぁ?ヒナ?」
「『俺らしい』って何?」
「え?」
「なぁ?俺って何なんだろう。」
「何がしたいんだろう。」
「手に入れたいモノがあっても掴み取る勇気も無い。」
「好きな女を奪い去るなんて。」
テーブルに置かれたヒナの細い指に自分の指を絡める。
「出来ればどんなに楽か。」
「俺はずっと、ここで立ち止まってるんだよ。」
「ヒナ?」
絡み取る指を唇に付ける。
「お前は、今幸せ?」