第62章 衷心
「それで?話って、それが本題じゃないだろ?」
何も気づかないフリ。
だいぶ慣れたんだよ。
少しは様になってる?
「えっと。」
「信彦さんにも、まだ相談してない事なんですけど…」
「これからナレーションの方にメインを置こうと思うんです。」
視線を逸らしてボソボソ呟く。
『信彦』ね。
いつから呼び方変わったんだろう。
「ふぅーん。それで?」
何が聞きたいんだろう。
「客観的に見て、私ってどうなんでしょう?」
質問するのにこっちを見ない。
「は?」
苛立ちが隠せなくなる。
そう。オレの悪い癖。
「だから…」
同じように声を荒げるのは、お前の悪い癖。
「もう決まってんだろ?」
考えてることくらい分かるんだよ。
「………。」
「今日呼んだのは、違う目的だろ?」
本当の目的は何?
「………もう…達央さんは何でも分かっちゃうんですね。」
長い付き合いだし。
「一時は深い仲だったしな?」
ちょっと戯けて言ってみる。
「それで?」
さぁ?何を聞かせてくれる?
「私。信彦さんの傍にいることに決めました。」
さっき家に戻ったって聞いた時点で気付いてはいたけどな?
「まぁ、それがベストな選択かもな。」
「信彦さんは私を必要としてくれてるんです。」
オレだってお前が必要だよ。
悩んで出した答えだって分かってる。
それでも…
「ヒナ?」
「?」
聞き分けの良い先輩は、やっぱり俺の柄じゃ無い。
前言撤回。
やっぱりお前に触れたいんだ。
前にも1回言ったけど。
そろそろ本音を言おうかな。
「オレもお前が必要なんだよ?」
「知ってた?」
このままノブのモノになるのも癪だし。
最後の悪あがきさせてよ。