第62章 衷心
店に入って、通された半個室。
襖を閉めれば二人だけの空間。
テーブルにつくと、大きく息を吸ってヒナが頭を下げる。
「先日は、大変ご迷惑をお掛けしました。」
「手当てまでして頂いたのに、ちゃんとお礼も言えず。」
「能登さんのところで少しお世話になった後に、家に帰りました。」
「落ち着くまで少し時間は掛かりましたが、今までの生活に戻ることが出来ました。」
「ありがとうございました。」
真剣な眼差しでオレを見つめる。
「随分畏まっちゃって。」
「茶化さないでくださいよ。」
「珍しく真面目に話してるんですから。」
「あの時は、どうなるかと思ったけど落ち着いたようで良かったよ。」