第61章 御伽
「えー。まさか週末にこのお店には来ないでしょ?」
少し離れた場所にいる女の子たちの声が耳に届く。
確かにこのお店はボクの縁のお店。
ここは、舞浜にある期間限定店舗。
このお店に来た理由は…
「日菜乃ちゃん。これが似合うんじゃないかな?」
手のひらに乗せたネックレス。
「この店舗でしか買えないんですよね?」
前にいる店員さんに声を掛けて確認。
出展期間にしか買えないネックレス。
初めて見たときに日菜乃ちゃんに似合うと思ったんだ。
後ろに回り付けてあげれば、嬉しそうに鏡を見つめる。
鏡越しに目が合ったと思ったのに、すぐに逸らされるのはさすがにダメージ大きいかな…。
「何で逸らすの?ボク傷つくよ…」
少し意地悪してみれば、可愛い反応に思わず抱き締めたくなる。
そんなキミが愛くるしくて仕方がないんだ。
一歩ボクから離れる日菜乃ちゃんの手を取る。
「日菜乃ちゃん?行こうか?」
繋いだ手を戸惑うように見つめてから不安そうにボクを見上げる。
「キミのことはボクが守るから。」
「安心してね。」
「やっぱり、ノブくんだよね?」
「え…でも…手繋いでるし…違うでしょ?」
どんどん小さくなる声に耳を傾けながら繋いだ指に力を込める。
「何があってもキミを守るから。」
そう言えば、小さく頷いてくれる。
「ケーキ買って帰ろうか?」
「チョコケーキが食べたいです。」
「うん。ボクもチョコにする。」
「じゃあ、ミルクかビターか選べるあのお店にしよ。」
ニッコリ笑う日菜乃ちゃん。
この手は絶対に離さないよ。
さぁ。一緒に行こうか。