第60章 還御
マンションのエントランスを抜けると岡本さんが植え込みに腰掛けて待っていてくれた。
「岡本さん。」
声を掛ければ、顔を上げるもののばつが悪そうに顔を伏せる。
近づき手に触れると冷たい。
朝のこんな時間だから冷え切ってる。
「いつからいたんですか?」
「えっと…言いたくない。」
ポツリと呟き顔を背ける。
「岡本さん…心配かけてごめんなさい。」
「迎えに来てくれて、ありがとうございます。」
冷えた手を両手で包み、そっと撫でる。
「一緒に家に帰りましょう。」
そう言えば嬉しそうに目を細めて笑ってくれる。
笑顔がぎこちないのは私のせい。
まだ気持ちの整理は出来てないけど、私の居場所は貴方の隣だから。