第59章 花莚
シャワーを済ませ、案内されたゲストルーム。
ベッドにドレッサー、小さなテーブルと一つだけのソファー。
「好きに使っていいからね。」
それだけ言うと、能登さんは扉を出て行く。
何も聞いてこない。
優しさだって分かってる。
岡本さんにも連絡しなくちゃ…
そう思ってスマホを手に取るもすぐに伏せてテーブルに置いてしまう。
ベッドに座り足の裏の絆創膏を剥がす。
「結構切っちゃったな…」
1枚1枚剥がす度に現れる傷口。
血は出てないけど、今にも開きそう。
手当てをしてくれた達央さん。
まさかあの場所で会えると思わなかったし。
あの場所で会えたことが嬉しかったのも事実。
あの場から連れ出してくれたのも嬉しかった。
電話の後だから何が起きたかくらい想像はつくだろうけど。
それでも何も聞いてこなかった。
その優しさに甘える事が当たり前になってる。
あの頃から私はいつも甘えてばかり。