第59章 花莚
「能登さんっ…っ」
「逃げてもいいけど、それじゃあ何も解決しないわ。」
「…ゆっくり考えなさい。」
「落ち着くまで家にいていいから。」
ポンッと肩を叩いて、リビングの外へ出て行く。
膝を抱えて瞼を閉じる。
思い出すのは岡本さん。
あんな表情見たこと無かった。
急に怖くなったの。
貴方の口から達央さんの名前が出るのが怖くて。
今まで何度かはぐらかしたこともあった。
それでも貴方の耳には入ってしまう。
今度は何が知られたんだろうって。
岡本さんには、過去の私なんて…知られたくない。
自分の過去なんて変えられないのにね。