第59章 花莚
ソファーに座るとストールを肩に掛けて、そっと背中を撫でてくれる。
「日菜乃?」
「少し話してもいいかしら?」
「私が連絡した時点で気付いてると思うけど。」
「日菜乃の事を教えてくれたのは、岡本君なのよ。」
「何があったかまでは、聞いてないけど。」
「他に頼れる人がいないって、申し訳無さそうに連絡してきたの。」
「心配してたわ。」
「帰ってきて欲しいって。」
「本当は会いたいけど。」
「自分に会いたくないなら、自分はホテルで暮らしても構わないって。」
「日菜乃の無事が確認出来ればそれで構わないって。」
「日菜乃が話したくないなら無理には聞かないし、帰れとも言わないわ。」
「ただね…私も日菜乃が心配なの。」
「事務所に入所した時から知ってるし。」
「妹みたいに思ってる。」
「年は離れてるけど…」
「能登さん…ありがとうございます。」
「私も能登さんの事…お姉さんみたいだって」
「慕ってました。」
「いつも迷惑ばかり掛けて。」
「本当にごめんなさい。」
「日菜乃?あなたは、デビューしてから、いつも偽って…自分を偽ってきたでしょう。」
「本当の自分を見失ってるんじゃないかしら?」
「嘘に飲み込まれないで。」
「自分を見失わないで。」
「弱くたって良いじゃ無い。」
「貴女は貴女なんだから。」