第57章 誹議
「これから名前で呼んでくれない?」
「え?」
「ね?呼んでよ。」
だって。
「日菜乃ちゃんって滅多に名前で呼ばないでしょ?」
タツさんのことは名前で呼ぶのに。
「お願い。」
子供じみてるけど。
「今さら、恥ずかしいです…」
「恥ずかしい事なんて沢山してるでしょ?」
耳の縁を舌先でなぞる。
「ね?呼んでよ。」
シャツの襟ぐりを引っ張り、はだけた肩に唇を落とす。
「…っ!」
「ね?早く呼んで。」
ブーブーっと机に置いたスマホが再び着信を知らせる。
「電話鳴ってるよ。」
「早く出なよ。」
手を伸ばし、スマホを取る。
画面には…
そう……
あの名前。