• テキストサイズ

逢ふことの(裏)~声優さんと一緒~

第57章 誹議


キッチンで洗い物をする日菜乃ちゃん。

テレビを見ながらソファーに座っていると机に置かれたスマホが震えた。

視線を落とせば画面が切り替わる。

『鈴木達央』

その表示に息を飲んだ。

チラッと視線を日菜乃ちゃんへ。

気付かずお皿を洗ってる。

何でタツさん?

やっぱり何かあるの?

指先は机の上のスマホへ伸びる。

電話…出ちゃおうか…

掌に置いたスマホは、まだ着信を伝える。

随分長いし…

何かのお誘い?

ロックマークをタップ。

………。

さすがにマナー違反でしょ。

我に返りスマホを裏返しにして、机に置いた。

少しすれば振動は止まる。


おでこを机に付け瞼を閉じる。

何やってんだか…。

「岡本さん?具合悪いんですか?」

そっと肩に手を置かれ撫でられる。

チラッと視線をあげると心配そうにボクを覗き込む。

鼻孔を擽る甘い香り。

「ボクの好きな匂いがする。」

「シナモンロールですよ。チンしただけですけどね。」

「食べられます?」

「もちろん!」

そう言えば、笑ってくれる。

一切れ取って運べば口いっぱいに広がる甘さ。

食べてる間に淹れてくれる紅茶。

「日菜乃ちゃん。」

手招きして呼び寄せる。

床に座ったボクの膝と膝の間に座らせ、包み込む。

うなじに顔を埋めると大きく息を吸った。

「日菜乃ちゃんの香りは落ち着くな。」

「くすぐったいですよ。」

肩をすくめてクスクス笑う仕草が可愛い。

「ね?」

「お願いがあるんだけど」

「聞いてくれる?」


/ 549ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp