第56章 把持
手を差し出したその先のキミは、あの頃みたいに笑ってくれない。
恥ずかしそうに頬を染めながら俯いて。
どうしてあの時、もっとしっかり手を握らなかったんだろう。
どうして突き放してしまったんだろう。
ボクは、いつも1つのことしか出来ないし。
どうして分からなかったんだろう。
少なくともあの頃のキミはボクを見ていてくれた。
キミに対する想いが募るにつれて、キミを疑い始めてる。
一緒に暮らしても不安で仕方ない。
本当にキミはボクを思ってくれてるんだろうか…
ボクの好きは全てだけど。
キミの好きは一部。
そんな気がして仕方ないんだ。