第55章 冀望
日付を越えて、1時間。
部屋に入ると電気は付いているものの気配は感じられない。
「さすがに寝ちゃってるか。」
リビングの扉を開けると机に突っ伏して眠る日菜乃ちゃん。
良かったような…悪かったような…
大きく息を吸い込み、自宅を落ち着かせるようにゆっくりと吐き出す。
そっと近づき顔を覗き込めば、スヤスヤと気持ち良さ気に寝息をたてる日菜乃ちゃん。
「ヨダレ垂れてるし…」
ティッシュで拭き取り、肩を叩く。
「日菜乃ちゃん。起きてよ。」
「風邪引いちゃう。」
「んー…はっ!岡本さん!お帰りなさい。」
「私、寝ちゃって…」
「随分爆睡してたみたいで。ヨダレ垂れてたよ?」
「え!?」
もう付いていない口元を拭う。
「さっき拭いてあげたよ。」
「すみません…」
「いやいや。謝らないでよ。」
「今から急いでお風呂入ってくるから、起きて待っててくれる?」
「今日のイベントの話でも聞いてよ。」
そう言えば、嬉しそうに笑ってくれる。
このコが浮気なんて…そんなことするわけ無いよ。
疑った自分が恥ずかしい。
そう。
信じてるだけ。
目を背けた訳じゃない。