第55章 冀望
ホームに降り立ち改札を目指す。
顔がパンパンだよ…
こんな顔で日菜乃ちゃんに会いたくないなー。
手に提げた、きび団子の紙袋を腕に書けて頬をマッサージする。
「あれー?ノブ??」
名前を呼ばれて振り返る。
「あ!櫻井さん!お疲れさまです!」
「おー。お疲れ。地方で仕事?」
「はい。今、岡山から帰って来ました。」
「岡山!?随分遠いな…飛行機で帰ってくれば良かったのに。」
「ボクも飛行機に乗りたかったんですけど、最終便に間に合わなくて。」
「なので必然的に新幹線に。」
「そうなんだ。お疲れさま。」
「あ。そうだ!きび団子です。良かったらどうぞ。」
紙袋から多めに買ったきび団子を取り出し、袋に詰め直し差し出す。
「おー。サンキュー。」
「櫻井さんも今帰りですか?」
「あぁ。俺は名古屋からだよ。」
「お疲れさまです。」
「あ。そうそう。昨日は日菜乃ちゃんを送り届けて頂いてありがとうございます。」
軽く頭を下げる。
「ん?俺は送ってないよ。飯は食ったけど、帰りはタツに任せたから。」
「え…タツさん…ですか?」
「あー…俺が予定入って…でも、ちゃんと送り届けたみたいで安心したよ。」
「じゃあ、帰るわ。」
ヒラヒラと手を振って、クルリと向きを変えて歩き始める。
「団子サンキューな。」
「たまには日菜乃貸してー。」
「あ…はい。ありがとうございました。」
頭が混乱する。
何で嘘つくの?
つかなきゃならない理由があるの?
ね?
キミの視線の先にはボクじゃなくて、タツさんがいるの?