第55章 冀望
朝起きると隣に岡本さんはいない。
「お仕事かな?」
いるはずのない隣のシーツに触れても温もりは感じられない。
ラインを見れば
『今日は岡山でお仕事だから、帰りは明日になるかな。』
『なるべく早く帰るね。』
『もし明日、時間あったら買い物でも行こうよ。』
『この前壊れた靴を買ってあげるから』
『どこのお店が良いか考えておいて。』
『お土産楽しみにしててね。』
『じゃあ、行ってきまーす!』
画面を見るだけで頬が緩む。
すると同時に別の人の顔も浮かぶ…
送って貰ったお礼も言わなきゃ。
トーク相手を探し、タップする。
………もし送ったら迷惑かな。
やっぱり電話にしようか。
電話帳を開いて番号を表示するものの、それより先に指が進まない。
お礼を言うなら早い方がいいと思う自分がもいるけど、スルーされたらと急に小心者になる自分もいる。
……。
悩みに悩み、メールを立ち上げる。
『昨日は送って頂きありがとうございます。』
『無事に帰れました。』
これなら既読にモヤモヤしなくて済む。
私は何から逃げてるんだろう……。
明日はオフだし。
さぁ?どこに行こう…