第55章 冀望
「ふぅわ~」
「でっけー欠伸。」
「マスクしてても分かるよ…。」
前の席からこちらを窺いながら話し掛けてくる良平さん。
「あー。すみません。昨日寝て無くて…」
目を擦りながら、また欠伸をしてしまう。
「打ち上げ?」
「いや…まぁ色々あって。」
ジッと見つめる瞳に見透かされそうで目線を逸らす。
「何赤くなってんだよ…ヤラシーな。」
「え!?赤くなんて!」
「バーカ…冗談だよ。」
「良平…あんまり虐めんなよな?」
「カッキーはノブに甘いからなー。」
フフンと鼻を鳴らして不服そうな良平さん。
「ノブも今のうちに寝とけよ。」
「今日は夜まで2公演あるんだから。」
マスクを上げて、キャップのツバを下げる。
「はい!しっかり寝ます!」
今日は地方でキラミューンのファンミーティング。
前入りメンバーと当日入りメンバーに分かれて。
前入りが浪川さんと自由くん。
一緒に行けるのがカッキーさんと良平さんとボク。
「お土産何にしよーかなー。」
「日菜乃ちゃんに?」
「!!!誰もそんなこと言って無いじゃないですか!」
「ノブ!良平!うるせーよ。寝てろ。」
「「はーい。」」
叱られて肩をすくめる。
昨日のキミとのあの時間を思い出すだけで顔がほころぶ。
「思い出し笑い…ヤラシー」
「違っ!!!」
キッと睨まれ口をつぐむ。
これ以上怒られる訳には行かないから大人しく寝ていよう……。
窓の外へ視線をずらせば、広がる青空。
明日も天気なら良いな。
さっきまで一緒だったけど、すぐにでも会いたい。
キミに会いたいんだ。