第5章 翻然
お店を出て、少し歩く。
外は、日が少し落ちて所々街頭がつき始めていた。
ボクより背が低い日菜乃ちゃんは、歩幅も狭いせいいつの間にか一歩後ろを歩く。
それでも、追い付こうと軽く小走り。
気付いたら少しゆっくり歩くよう心掛けてるんだけど…
気付くとこうなってしまう。
あと少し歩けば、駅。
こうして二人だけで会える時間は少ないから、もっともっと話をしなきゃと思うのに…
同じ事の繰り返し。
なかなか上手くはいかないな。
沈黙の時間に耐えきれなくなったのか話しかけられる。
「あのっ。岡本さん。」
「うん?」
「えっと。ご馳走さまでした。」
「すっごく美味しかったです。」
「教えて頂いた先輩さんにもお礼をお伝え下さい。」
「うん。気に入って貰えて良かったよ。」
「先輩にも伝えとくね。」
「こっちこそ、来てくれてありがとう。」
少し後ろを歩く日菜乃ちゃんに聞こえるように話しかける。
息を吸い込み、気合いをいれる。
「ね??」
クルッと振り返ると、夕陽が日菜乃ちゃんの頬を照らす。
「あのさ…」
スッと右手を差し出す。
「駅まで手……繋がない?」
日菜乃ちゃんは、嬉しそうに顔をほころばせてボクの右手をとる。
「岡本さん…ありがとうございます。」
そう言って、隣を歩く。
恥ずかしそうにしながらも、ニコニコ笑う顔を見てボクも頬が緩んだ。