第53章 躊躇*
「岡本さ…ん」
その名にハッと我に返る。
「ははは……最低だな…」
体を離しベッドに腰掛けた。
背後から聞こえる規則的な寝息。
「本当に最低だよ。」
膝に腕をたて組んだ指を額につける。
情けなくて情けなくて。
自分で自分を殴れるものなら意識が飛ぶほど殴り続けたい。
酔った女を襲うなんて。
堕ちるとこまで堕ちたみたいだ。
チラリとヒナに視線をずらせば、キレイなカラダを縮めて眠り続けている。
「ごめん。……寒いよな?」
畳んである掛け布団をそっと体に掛ける。
ポンポンっと布団を掛けた肩を二度軽く叩いて、乱れた髪を梳く。
「ごめんな。」
そう呟きベッドルームを後にした。