第52章 再来
「ヒナ随分酔っちゃったな?」
「そうですね…」
テーブルに突っ伏して眠るヒナ。
「途中からペース速いなーとは思ってたけど。」
「ノブと上手く行ってないのかな?なんて。」
「え?」
「いや。食事に誘ったときに一緒に暮らしててもノブと一緒に過ごせないとか言ってたからさ。」
「そうなんですか…アイツも多忙ですからね。」
「一緒に暮らしてるからこそ、不安になるのかもな。」
「………付け入るなら今かもよ?」
ニヤリと笑う顔に俺は失笑する。
「何言ってるんですか。」
「元の関係に戻るのなんて簡単じゃねーの?」
「今度は違う立場に挑戦してみたら?」
「いやいや。何言ってるのか意味が分からないですよ。」
顔の前で手を振って、目の前にあった枝豆を口に放り込む。
「ははは。別にとぼけてもいいけど。」
「………それなら、櫻井さんがやればいいじゃないですか。」
「いやー。俺はいつか終わるかもしれない関係より『先輩』として慕われる方を選ぶよ。」
「あまり慕われてるようには見えませんでしたけど。」
「あはは。痛いとこつくね。」
「否定は出来ないけど、一人の女の子にやきもきするのは性に合わないかな?」
「タツは意外と一途なんだから、その調子で頑張りなよ。」
「と、言うことで。俺は可愛い女の子の元に帰るから、タツはヒナの事送り届けてね。」
「え!?」
「だって~。俺、忙しいからさ~。」
「どうせ家も知ってるんだろ?」
「まぁ、宜しく頼むよ。」
「ここの会計は俺が出すから。では、お先~。」
ヒラヒラと手を振って消える櫻井さん。
目の前には眠りこけるヒナ。
「家なんて…近くまでしか分からねーよ…」
ため息をついて、ヒナの肩を叩いた。