第52章 再来
「悪いけど、一応後ろに乗ってくれる?」
「はい。」
スタジオも近いし、さすがに助手席は…ですよね。
誰が来るんだろう。
スモークを貼った車窓から眺める景色。
街の明かりが通り過ぎる。
聞いても教えてくれないだろうし、ここは大人しくしていよう。
少し走ると聞こえるウインカーの音。
キャップを被って、手を上げる姿を捉える。
「おっ。いたいた。」
ゆっくり止まると、助手席の扉が開いた。
「お疲れさまです。」
「ごめん。待った?」
「いや。さっき着いたとこだったので。」
「今日はゲストを連れてきたよ。」
そう言って櫻井さんが私の方に視線を向ける。
シートに乗り込むとこちらを振り向く姿。
「ヒナ?」
視線が合うと息をのんでしまう。
「ビックリしただろ?」
楽しそうな表情に言葉が出ない。
櫻井さん…絶対楽しんでる。