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逢ふことの(裏)~声優さんと一緒~

第51章 一笑


「貸してごらん?」

差し出された手に左手で、まだ持っていたタオルを渡す。

「さてと。」

後ろに回り込まれて、背中に手を入れられた。

「ちょっ!」

「ん?何か問題でも?」

「拭かなくて大丈夫です!」

「もう入れちゃったもん。諦めて従いなよ。」

そう言いながら、そっと腕を動かす。

冷えたタオルに岡本さんの体温。

背中に感じる感覚に胸が早鐘を打つ。

「拭きづらい…脱いじゃいなよ?」

「何言ってるんですか…?」

「ちゃんと拭いてあげようと言う優しさなんだけど。」

腰に回される腕。

濡れたタオルが微かにパジャマを濡らす。

「もう大丈夫です。ありがとうございます。」

「そう?んー残念。でも仕方ない。今日は大人しくする。」

うんうんと頷き、近くにあった洗面器に投げ入れる。

「スキンケア済ませたら、言って?」

「これ片付けてくるから。」

「はい…ありがとうございます。」

ベッドから下りると洗面器を脇に抱え寝室を出て行く。

「岡本さん?」

「ん?どうかした?」

「えっと…ありがとうございます。」

「もう何回も聞いたよ。そんなに遠慮しないでよ。」

ニッコリ笑う顔に胸がズキンと痛む。

「それから…」

「上に何か着てください…」

「目のやり場に困ります。」

顔を上げると岡本さんの姿はなかった。

「はーい。」

少し離れた先から聞こえる声。

私の居場所は、ここなの。

そう自分に言い聞かせた。
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