第51章 一笑
数枚用意してくれたホットタオル。
お陰で顔だけでなく体も拭くことが出来た。
岡本さんが戻ってこないうちにと思って拭いたから、満遍なくと言うわけにはいかなかったけど。
「日菜乃ちゃん。化粧水に美容液に乳液。これで大丈夫?」
廊下から聞こえる声に笑ってしまう。
「はい。それで十分です。」
「分かった。今持って行くね。」
先に持ってきてくれた着替えのパジャマに袖を通す。
これを着ると家に帰ってきたんだなと安心する。
ゆっくり息を吐き出し、グルグルに巻かれた包帯を見つめる。
「着替え終わっちゃったの?」
顔を上げると手にボトルを抱えた姿。
小脇には洗面器。
男性が可愛いデザインのボトルを持つって可愛いんだなと実感してしまう。
「はい。色々持ってきて貰っちゃって、すみません。」
「いやいや。ボクが好きでやってるんだから気にしないでよ。」
そう言うと私にボトルを手渡す。
「タオルは使い終わった?」
手に持つ洗面器にベッドサイドへ掛けたタオルを入れた。
「背中はちゃんと拭けた?」
「んー拭けましたよ。」
ニッコリ笑うとすぐに「嘘だ」と否定された。