第51章 一笑
岡本さんになんて連絡出来ない。
負担になりたくない。
心配なんてさせたくない。
「放っておいて下さい!」
「大丈夫です!」
それに…これ以上達央さんに頼ったら…
あの頃に戻ってしまいそうで怖い。
お願いです…このまま置いて行って下さい。
舌打ちに顔を上げると見下す視線に肩が竦む。
「どこが大丈夫なんだ!?」
「いい加減にしろよ。」
「そんな状態で治るわけないだろ?」
「遠慮なんかしてる場合じゃないだろうが。」
浴びせられる怒号に視界が滲む。
「ヒナ?」
呼ばれた声はさっきと違って落ち着き優しい。
「なぁ?」
「無理しても仕方ないだろう?」
「今日だけは甘えてくれよ。」
「なぁ…」
「今日だけは頼ってくれよ。」
肩にそっと触れる大きな掌。
優しさを感じる温かさ。
まばたきをすれば頬を伝う涙。
私は小さく頷いた。