第49章 振幅
「ノブの写真集」
そう言われて差し出された。
久々に見た岡本さんの写真集。
どれくらいぶり?
もう年単位で見てない気がする。
いくら探しても見つからなかったのに…
何でこんな所に?
さっきまであった場所を眺める。
「ほら。拭き終わったから。」
イスからポンッと軽快に降りる達央さん。
「ありがとうございます。」
そう言ったものの手に持つ本から意識を離せない。
「何であんなとこにあったんだろうな?」
「そうですね…酔って置いたんですかね?」
そう言いながら、パラパラとページをめくる。
見慣れた文字が1ページ1ページに記されている。
『201○.○.○ 表参道を2人で散歩』
『2年前に初めて待ち合わせした場所の近くでケーキを選ぶ。』
『急にハワイのかき氷屋さんを知りたいって言うんだもん。』
『焦っちゃったよ。』
『僕の写真集が見つからないって。』
『見つかるわけ無いよ…僕が隠してるんだもん。』
『撮影でハワイ。僕も、また行きたいなー。』
ポツンポツンと笑顔の岡本さんの写真に涙が落ちる。
ページを前に戻せば、書かれた日付が遡る。
表紙の裏。
そこには忘れもしない岡本さんがこの部屋に来た日。
初めてカラダを重ねたあの日。
日付とサイン。
その上には
『キミの笑顔は沢山の人を笑顔に出来るんだよ。』
『これからもその笑顔を…。』
「何これ…知らないよ…」