第46章 澄明
手を引かれベッドに座れば、体を屈めて話し掛けられた。
「待つのって辛いね。」
覗き込む顔に反射的に視線を外す。
「……そうなんですよ…。待つって…辛いんです。」
「私は何年待ったか…思い出せないくらい……」
目を閉じれば、今までの数年が駆け巡る。
「ごめんね。沢山待たせたよね。」
掛けられる声は優しさと寂しさが垣間見られる。
「数分なのに何度も何度も時計を確認しちゃった。」
「『まだ5分しか経ってない』を何度繰り返したことか…」
「沢山沢山待たせてごめん。」
顔を上げれば、困ったように見つめる岡本さん。
頬に触れる大きな手。
「日菜乃ちゃん。好きだよ。」
優しい眼差し。
視界がどんどんぼやける。
胸が苦しい。
でも、伝えなきゃ。
ずっとずっと伝えたかったこの気持ちをもう一度。
「私も岡本さんが好き…っ」
言葉に詰まりながら気持ちを絞り出すような声で伝える。
すると、岡本さんは溢れる涙を指で拭ってくれた。
「うん。ずっと前から知ってる。」
子供みたいな笑顔に私もつられて笑顔になるの。
「日菜乃ちゃんには、笑顔でいて欲しい。」
「キミの笑顔がボクの笑顔だから。」
頬を伝う涙は止まりそうに無いけれど、今できる最高の笑顔を。