第45章 薄暮
瞼を閉じて、両手を上げてグッと伸びをする。
「ボクならここにいるよ?」
その声に驚き振り返る。
「え…?何で?」
聞こえるはずの無い声。
でも聞き間違えるはずはない。
視線の先にいるのは…
会いたかった人。
私の好きな人。
信じられず何度もまばたきを繰り返す。
「えへへ。来ちゃった♪」
恥ずかしそうな笑顔を見せる。
その笑顔を見ても、まだ信じられない。
「え?夢?」
再び、何度もまばたきを繰り返す。
「夢じゃないよ。」
そう言って、私を背後から抱きしめた。
抱き付かれる感覚に夢で無いとようやく実感する。
「やっぱりハワイは良いね。」
「日菜乃ちゃんがハワイの話ばかりするから我慢できなくて来ちゃった。」
後ろから顔を覗き込んで、頬に岡本さんが頬を寄せる。
「もう…行動力あり過ぎですよ。」
今度は、お互い笑い合う。
異国の地でアナタに会えた。
それだけで嬉しい。
「ね?日菜乃ちゃん。」
「グリーンフラッシュって知ってる?」
「?」
首をかしげて後ろに視線を向ける。
「太陽が水平線や地平線に沈みきる瞬間にグリーンに輝くんだよ。」
「それを見ると幸せになれるんだって。」
「今日は雲も無いし、空気も澄んでる。見られそうだね。」
「さて。一緒に見ようか。」
腰に手を回し、グッと引き寄せられた。
耳元に感じる息遣い。
指差された沈み掛ける太陽。
その太陽が水平線に沈む一瞬。
グリーンに輝いた。
周りも歓声に包まれる。
「岡本さん!グリーンフラッシュ!見られましたね!」
振り返れば、微笑む岡本さん。
「日菜乃ちゃん。」
「どうしました?見えませんでした?」
「もちろん見えたよ。一緒に見られて嬉しい。」
「私もです!」
「日菜乃ちゃん」
「?」
「ボクは日菜乃ちゃんが好きだよ。」
「それを伝えるために、ここまで来たんだ。」
「ボクの彼女になってくれませんか?」