第42章 逕庭
「ヒナ?どうした?」
「目が真っ赤だよ。」
顔に掛かる髪を耳に掛ける。
「随分成長したな?」
キョトンと見つめる瞳。
「前は同性の声優と話なんてしなかっただろ?」
「もう偽る必要無いんじゃないか?」
瞳が涙でいっぱいになる。
「大丈夫だよ。」
「お前はそのままでも受け入れて貰えるよ。」
「自信持って。な?」
まばたきと同時に涙が溢れる。
「泣くなよ…」
涙を拭おうと動く指を理性で止める。
もう肌には触れない。
抱き締めないよ。
俺は、ヒナの隣にはいられない。
ヒナを支えるのはノブだから。