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逢ふことの(裏)~声優さんと一緒~

第41章 穏和


「懐かしいですね。」

「ん?」

2人並んで表参道を歩く。

「前にここに来たの覚えてます?」

「んー?いつ?」

「ちょうど2年前ですよ。岡本さんにとっては、些細な出来事なんですね。」

「あはは。冗談だよ。」

被っていたキャップのつばを上げて、ニッコリ笑いながら私の顔を覗き込む。

「何食べる?」

「話逸らさないで下さいよ。」

そう言って、岡本さんのキャップのつばを指先で持ってグッと下げる。

「おわっ」

「ヒドいな。冗談だって言ってるのに。」

キャップを被り直し眼鏡を掛け直す。

「ちゃんと覚えてるよ。」

「あのお店のショーウィンドウの前でクルッと回って『悪くない』って言ってた。」

「今日の服もよく似合うよ。」

どんどん頬が熱くなる。

岡本さんと、こうして出掛けるようになって数ヶ月。

カフェに行ってお茶したり、食事をしたり。

たまにお互いの家に行ったり。

一緒にいるだけで心が穏やかになるの。

勿論、あれから関係は持っていない。

他の人とも…。

「日菜乃ちゃん?どうかした?」

「えっと。ケーキでも買って家でゆっくりしませんか?」

「ケーキ。うん。いいね。そうしよう。」

指を絡めて私の手を引く。

「食べたいお店があったんだ。そこでいい?」

「はい。」

光が眩しい。

木漏れ日の下を歩けば、心地良い風が頬を撫でる。

「あ。そうだ。」

「岡本さんの写真集に載ってたかき氷屋さんの店名何でした?」

そう問えば、握られた手に力が隠る。

「え?何で急に…」

「この前、探してたんですけど見つからなくて。」

「今度、ハワイで撮影があるのであのかき氷食べたくて。」

「そう言えば、ここ数ヶ月見つからないんですよね。」

「何処かで見ました?」

「へ?しっ…知らないな~」

「?」

何で急に目が泳ぐんだろう。

さすがに自分の物って恥ずかしいかな?

「こっ今度調べておくよ。」

「はい!よろしくお願いしますね。」

こうして一緒に居られるだけで十分。

それ以上は何も望まない。

今の関係に満足していると言ったら嘘になるけど…

今は、この時間。

共に過ごせる事に感謝してる。

岡本さんの前では、自然と自分が自分でいられるから。

貴方の隣にいる時は自然体でいられる。

偽らないでいられるの。

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