第34章 疆域*
「痛っ」
「何で突き飛ばすんですか!?」
感知式の照明が反応し、お互いの立場を知らせる。
玄関ホールに膝をつき、見上げる水澤。
睨みつけても、全然怖くもなんともない。
強がりで出来てるメッキなんて、直ぐ剥がれるだけ。
見下ろし舌打ちをすれば、唇を嚙みながら睨みつける瞳は光を受けて揺れる。
泣くのか?
「もっとやるべき事に集中しろ。」
反抗的に俺を見つめる瞳。
「それにしても、随分余裕が出てきたもんだな?」
「仕事の次は『男』か?」
「さすが注目作品に起用される新人は違うな?」
「何なんですか?さっきから。」
「そんな事ひと言も言ってないじゃないですか。」
「言わなくても態度にも言動にも出てるんだよ。」
「安っぽい喋り方。男の誘いにホイホイついて行く尻軽。」
「そんなにやりたいなら満足せてやるよ。」
顎を引き上げ、噛み付くようなキスをする。
驚いたのか一瞬カラダを引く水澤。
「何?怖じ気づいた?」
クスッと笑えば、睨むようにこちらの様子を覗う。
「止めてもいーんだけど?」
その言葉を聞くと、水澤は瞼を閉じてブラウスのボタンを外し始める。
手が震えて、なかなか外せないようだ。
………強がっちゃって。
その手を取り軽く撫でる。
今度は、頬に触れ唇にそっと唇を押し当てる。
触れるだけの口づけ。
一旦放し、再度顔を見つめる。
「口開け。」
指示すれば、チラリと見える白い歯。
今度は、その隙間を狙い舌を滑りませながら深い深い口づけを交わした。