第34章 疆域*
「森本さん。何ですか?」
「部屋まで付いてくるつもりですか?」
「まだ話は終わってない。」
目も合わせず、私の横を歩く。
「話なら、さっき車の中で済ませてくれれば良かったじゃないですか。」
「途中から何も話さなくなったの森本さんですよね?」
玄関のドアの前で睨みつけるものの一切効果は無いみたい。
「さっさと鍵開けろ。」
「はいはい。マネージャー様のご命令ですから開けますよー。」
悪態を付きながら、ロックを外す。
その音を確認すると同時に、勢いよく開く扉の奥の闇に私は突き飛ばされた。