第34章 疆域*
~♪♪
着信を伝える音色。
後部座席に座る水澤が慌ただしくバックの中からスマホを取り出す。
「はい!この間は、ご馳走さまでした。」
「えー。本当ですかぁ?」
「そう言って頂けると嬉しいです~。」
「はい。またご一緒させて下さい。」
「楽しみにしてますね。」
クスクス笑う姿をバックミラーで捉える。
安っぽい女にしか見えない。
どこでそんな話し方覚えてきたんだよ。
頭悪そうにしか見えない。
これ以上自分の価値を落とすな。
あー。イライラするな…
変えてやりたいと思ったけど、違うんだよな。
人脈を増やすことに反対な訳じゃない。
ただ…
都合の良い女に成り下がって欲しくはない。
一度落ちた信用は、並大抵の努力では上げられない。
貼られたレッテルは、そう簡単には外せない。
流れた噂は、払拭出来ない。
今の行動が後に、自分を苦しめる事だってあるんだよ。
今が良くても、後々後悔しても取り返しがつかない。
そう…過去は変えられない。
期待されてる分、妬まれる事も多くなるんだよ。
結果的にお前を助けられれば、どう思われたって構わない。