第33章 周章
回りを見渡せば、顔も名前も見たことのある人ばかり。
「日菜乃?」
聞き覚えのある声に、振り返れば長い髪に透き通るような肌。
「能登さん…おはようございます。」
「あらあら。緊張しちゃって。」
心配そうに覗き込む。
「すみません…活躍されてる方ばかりで。」
「どこを見れば良いのか…」
視線は右往左往するばかりで、情けなくなる。
「もっと自信を持ちなさい。」
「オーディションも通って、ここにいるんだから。」
「ね?」
目の前で笑って、私の緊張を解してくれる。
あの時も……そう。
不安だった私に温かい声を掛けてくれた。