第33章 周章
「え?」
何度も瞬きを繰り返す。
「もう一度、よろしいですか?」
声が震える。
「合格したよ。」
「よく頑張ったな。」
優しく微笑む姿に、視界が滲んだ。
「……本当ですか?」
「嘘ついてどうするんだよ。」
「ようやくスタートラインに立てたな。」
そう言って、肩を優しく叩く。
「ありがとうございます。」
声を絞り出すのが精一杯。
「但し。ここからが本番。」
下がるトーン。
一気に空気が引き締まる。
「うちに泥を塗るような仕事はするなよ。」
「やるからには全力で。」
「後戻りなんて、出来ないからな?」
「成功するまでは、泣くな。」
瞬きをすれば、こぼれ落ちる涙。
それを急いで拭う。
「泣いてません。」
「もちろん、全力でやります。」
「すぐに森本さんを驚かせますよ。」
虚勢を張っても、徐々に滲む視界。
これ以上、こぼれ落ちないように天井へ顔を向ける。
「何だよそれ…」
呆れる声に、怒られずに済む思うとホッと胸を撫で下ろす。
「今の気持ち忘れるなよ。」
今度は、さっきより強く背中を叩かれた。