第28章 着想
グッと伸びをする姿を視界の端で捉える。
「じゃあ。そろそろ帰る。」
「え?」
「何?帰って欲しくない?」
「別に。」
「まぁ、お前が引き止めるなんて期待してないけどな。」
そう言って、そそくさと廊下を進み玄関へ。
「じゃあ、またな。」
扉が閉まりきる寸前、視線を上げると達央さんと目が合う。
「気が変わった。」
「え?」
耳を疑った時には、私は既に達央さんの腕の中に収まっている。
「やっぱり帰らない。」
指の腹で頬を撫でられ、その指は唇へ。
何度か左右へ往復させたあと顎を引き上げられ達央さんの唇が触れた。