第23章 密事*
「何なんだ?」
頭を掻きながら、出て行ったドアを見ながらベッドに歩みを進める。
着替えを終えて、上着を羽織る姿を捉える。
「達央さん…多分…代永さんに見られました。」
朝日を浴びて、輝く輪郭。
逆光で顔が見えない。
どんな顔をしてるんだ?
「顔見られた訳じゃねーだろ?」
「そうですけど…。」
「ふぁーぁっ」
欠伸をしながら、目を擦る。
何を不安がってんだか。
「弱くなったり強くなったり、忙しいな。」
「?」
「コーヒーでも飲むか?」
「いえ。部屋に戻ります。」
「誰かに見られたら大事(おおごと)になりますよ。」
ジジッとファスナーを上げながら、俺の横を通り過ぎドアに手を掛ける。
「おい。」
腕を掴み、引き寄せ壁に押し付ける。
「何ですか?」
キッと睨み付ける。
「本当は、気が強いんだよな?」
「は?」
「『声優・水澤日菜乃』は汚れを知らない女のコ」
「実際の水澤日菜乃は、気が強くてインランだもんな?」
「つまらないこと言ってないで、離してくださいよ。」
「はいはい。」
壁についた腕を外すとすぐさまドアを開ける。
閉まる扉の隙間。
顔は見えない。
「向こうで会おうな。」
言い終えると同時にドアが閉まる。
「さて。風呂でも入るか。」