第3章 憧憬
ふと視線がぶつかる。
「あっ。ご挨拶が遅くなり、申し訳ありません。」
「水澤日菜乃です。よろしくお願いします。」
声のトーンを上げて、当たり障りの無い挨拶。
「月島です。」
え…それだけ…?
「あやめちゃん。もう少し話してあげてよ。」
「え?自由のとこの子?」
「違うよ。」
「そう。」
「うん。ただの共演者。」
『ただの共演者』
ナイフのように私の心を抉る。
「あ。それでさー。あやめちゃん。」
自然と肩を抱く姿に胸が苦しくなる。
パチッと手を叩く音。
「もう。つれないな~。」
眉を寄せながらも、嬉しそうに話す入野さん。
呆れるような月島さん。
そんな二人の姿が私の心に影を落とす……。